「目の前にいる人をすきになること。

そうすると、もっと相手のことを知れる気がします」

 

そう微笑むのは、企業の採用担当として

年間約500人の面接を行っている佐々木りつ子さん。

彼女と出会ったのは、2016年秋。

東京・清澄白河で開催された文章講座がキッカケだった。

 

1月の東京。

雪まじりの雨が舞う中、思い出の駅で待ち合わせました。

「仕事は、保育園を運営している会社の採用担当です。

私が入った頃は従業員200人くらいの会社だったんだけど、今は約2000人。

この数年で一気に大きくなりました。

 

採用担当として、今は年間500人位の方とお会いしています。

 

いろんな方がいて、おもしろいなあって思います。

しんどいこともあるけれど、逆に面接の場で私が教えられることもあって、とても楽しいです」

対話する仕事

「面接で大切にしていることは『その人』と対話をすることです。面接用に準備されたセリフじゃなく本音を聞けるように、まずは私がくだけます。

 

“この人には何を話しても大丈夫だ”って思ってもらえるよう、私も率直に想いを伝えます。採用募集ではありますが、そこは相手の方のためにも、素直に。

 

「今は転職しない方がいいんじゃないですか」と伝えることもあります。保育士と言う仕事は、楽な仕事ではないと思うんです。でも、皆さん小さい頃からこの職業に憧れて、真直に夢を自分の手で掴んでいる。

 

すごいなぁと思います。カッコイイですし、尊敬します」

初対面の時から、りつ子さんは緊張しなくてもいいオーラが溢れていた。

優しくて、誰からも信頼されているんだろうなと思えるそんな彼女でも、自分自身のあり方に悩んだ時期があったという。

「今から4年前くらいかな。

なりたい理想の人物像ばかり思い描いて、自分自身の事を見ることができていない時期があったんです。そのくせ変なプライドはあって。

 

ちょうどその時、自分の事をよく知ってくれていた人から、今の貴方はふわふわしてる、って言われてしまって。

 

 

その言葉の意味を考えると同時に、自分ってなんだろう、私はどうあればいいんだろう、って考えました。

 

とにかく本を読んで、言葉を探して、いろんな人に出会いに行きました。

欠点だらけでもいいや、それも私だしと思い始めたころから周囲からも“変わったね”と言われるようになりました。

それまでコンプレックスに感じていたものも、少しずつ落とし込むことができるようになりました」

言葉ってすごい、言葉っておもしろい。

人それぞれ個性があって、得意不得意もある。

「私もはじめ開発部配属だったんですけど、数字がどうしても苦手で。

あれ、佐々木さんダメだねって採用担当にうつってました(笑)」

 

目の前にいる人が今何を考えているのか、何を伝えようとしているのか。

そんな風に目の前にいる人を想う採用の仕事は、りつ子さんにピッタリだったようです。

「面接後は、みなさんそれぞれ各施設に配属になるので、普段会うことはほとんどなくなります。それでも、なにかあったらあの人に相談しようと、心の片隅ででも思ってもらえてればいいかなと思っています」

悩みを抱えている方には「私だってボロ雑巾みたいな時があってね・・・」と例えて笑い話をすることも。

「“えー、りつ子さんでもそんな時あったんですか”って笑ってくれたりして。今だってカッコよく仕事ができているわけじゃないけれど、ちょっとでも力に慣れたらいいなあって思っています」

りつ子さんは、会社の出来事をブログで発信もしている。

最近、うれしいことがあったという。

「採用担当として書いているブログを、自分の思っていなかったところで意外と見ていただけていることを知ったんです。ブログ見てます、と合同説明会でブースに立ち寄っていただいたり」

「あと最近あったことなんですが、新卒採用の時には残念ながら不採用にした方が、また面接にきてくれたんです。

うちで働きたいっていう気持ちがずっとあったそうで、仕事が大変だった時も私のブログを読んで乗り越えたといってくれたんです。

面接に来て履歴書を見たときに、私も顔を覚えていて“うちを数年前に受けていますよね?”と聞いたら“そうなんです!”と答えてくれて、面接でそんな話をしてくれました。彼女は数年前に会った時よりもずっと成長もしていて、来年度から一緒に働くことになりました。

自分の書いた言葉が、自分の思わぬところで誰かの力になっているんだってことをまざまざと感じて、言葉ってすごい、言葉っておもしろい、と思いました」

りつ子さんに贈った花は、エピデンドラム。

花言葉は『日々豊かに』。

「夢ですか、そうだなぁ。

 

絵本をつくってみたいです。

昔から、絵を描くのが好きで。

 

数年前に西原理恵子さんの『生きのびる魔法』という本を読みました。

いじめられたら逃げてもいいんだよっていうようなメッセージが、印象的だったんです。

 

行き詰まった人に、押し付けるでもなく、でも別の道を照らすみたいな言葉でつづられていて、すごいなーと思って。

これでどれだけの人が救われるんだろうなぁと思いました。

 

自分もたくさんの言葉に助けられたし。

ブログのこともあるけど、表現するってことは、すごく深くておもしろいなと。

でも、そう考えると人に放つ言葉とか、日々のことって全て表現ですね」

りつ子さんの周りに流れるテンポは優しくて、ゆったりと包み込んでくれる。

「人が織りなすものって、財産だと思うんです。

表現することって、責任も伴うけど誰かしらの何かになると信じてます。

だからいつか、人の力になれるような言葉を紡げる人になりたいです」

「"伝える"で、誰かの力に。」
​−No.44 佐々木 りつ子
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