「ペイフォワードという映画、ご存知ですか?

自分が誰かに良いことをしてもらったら、今度は自分が別の3人に良いことをしていく…という話なんですが、私はその映画が好きで。

そんな優しさの連鎖をこのお店から生めるといいなぁと思っています」

『ひとにやさしい、地域にやさしい、地球にやさしい』

そんなコンセプトで集められた商品を取り扱うセレクトショップが東京・日本橋にあります。

 

お店の名前は『エシカルペイフォワード』。

東京メトロ水天宮前駅から徒歩3分。現在の取り扱いは約30ブランド。

 

『ひとにやさしい(=フェアトレード)、地域にやさしい(=東日本大震災復興支援、地域の商品等)、地球にやさしい(=オーガニックリサイクル等)』商品が日本中、世界中から集まっています。

 

店舗は、NPO法人芸術家の村の事業として、2016年にオープン。ショップの立ち上げを提案したのは、同NPOでボランティアをしていた沼田桜子さんでした。

桜子さんは、北海道出身。

北海道大学水産学部を経て上京。卒業後は生活協同組合に勤め、今年の4月からは生協の産直を推進する部署に異動する予定です。

 

彼女の夢は、中学生から大学4年生までずっと『教師になること』でした。

「中学校の先生が大好きだったんです。私が知りたいことを口にすると、いつも一緒になって答えを探してくれる先生でした」

興味関心にとことん向き合ってくれる先生。一緒にインスタントカメラの分解をしたり、幼かった桜子さんの興味を深ぼりしてくれたといいます。憧れの先生を目指して、教師になるには残りはわずかな単位だけ。そんな矢先、彼女の夢を変える出来事がおこります。

 

 

 

桜子さん大学3年生の春、函館のフレンチレストランでのアルバイト中の出来事でした。

 

「ちょうどシェフが新メニューの開発をしていた時でした。

シェフは自身のご友人が栽培した立派なアスパラを、どうしたら素材の味を生かすことができるかと、色々と開発をしていました。

その過程で、アスパラを絞ったエキスを一度、味見させてもらえたんです。

 

もう、衝撃でした。

 

 

アスパラがすっごく甘いんです。

エグみも全くなくて、例えるなら…まるでトウモロコシスープのような甘さで。

アスパラってこんなに美味しいんだと驚きました」

地元のおいしい野菜に出会ってしまったと話す桜子さん。

 

「ただ、そのアスパラはシェフが直接購入をしていたので、食べたくてもスーパーでは買えないことを知ったんですね。こんなに美味しい食材が地域にあることを、私は今まで知らなくて。なぜスーパーで買えないんだろう?きっとこのアスパラを食べたい人はもっと沢山いるはずなのにと考えはじめました」

 

いいものをつくっている人と、食べたいものを繋ぎたい。

 

中学生のとき先生がしてくれたように、目の前の人に求めていることを繋げられるようになるには。桜子さんの夢は形を変えた『繋ぐ』仕事へと変化していき『人と物を繋ぐ』現在の桜子さんの活動のルーツになります。

 

 

その後桜子さんは、生活協同組合に就職。

青果の品質管理業務として、購入者の声を聞いて、産地の方々と一緒に品質改善をして。忙しくも充実した日々を送っていた2011年、3.11東日本大震災がおこりました。

 

「福島で原発が停止した後から、日々青果の放射能の検査をしていました。

ここからが、一番つらかった」

 

人に害のない基準値は?どこまで良くて、どこからはだめなのか。様々な情報が流れる中、被災地の情報も受け取りながら、毎日頭を悩ませながらお届けする商品と向き合っていたといいます。

 

 

「福島原発の事故が起き、『福島の野菜は使わない』とする流通が増えたんです。健康面への影響をそれぞれが考える中、お客さんにはお子さんのいるお母さんもいるし、その思いもわかるんです。

 

でも、手がけていた農家さんのことを考えると…」

震災後も、桜子さんの所属する生協では福島の野菜を取り扱い続けた。

産地にも足を運び高圧洗浄の手伝いをしたり、押し付けるでもなく、やめるでもなく、購入者が選べるように商品の掲載方法を変えた。

みんないろんな思いがあって辛い作業だった、けれど会社は『選択肢を広げる』という選択をした。この会社を選んで間違ってなかったと思えたのも、この時だったそうです。

 

「震災後は毎年福島の桃の時期になると、現状報告も含めて除染の状況を広報紙でとりあげていたんです。でも4年目にやめました」

 

「研修で福島に行ったとき、地元で匠と呼ばれる桃農家さんにお会いしたんです。一つ一つの桃の木と向き合いながら、全体のバランスを見て丁寧に剪定をされていて。木がとっても綺麗だったんです。調和がとれているってこういうことかと初めて思えて、感動してしまって。

 

その桃農家さんがとっても素敵だったので、記事にしたいと先輩に伝えました。

もうそろそろ福島の今を、前向きに発信してもいいんじゃないか、と先輩も同じ考えで賛成してくれて。広報紙で特集を組むことになったんです」

 

結果、記事の反響は大きく、産地の農家さんとの絆が深まっていく感覚を覚えたといいます。

 

「人生に触れた方がおもしろい。つくりあげられた綺麗なストーリーより、共感できる気がしませんか?」

 

思いを込めてつくられた商品を、求めている人にストーリーとともに伝えたい。

『エシカル』という概念に出会ってから、桜子さんの思いはさらに広がります。

エシカルブランドの中には、店舗を持たず催事やネット通販を中心に行っているブランドもある。静かな住宅街に店舗を持つエシカルペイフォワードでは、ゆっくりと商品を吟味し購入することができるのも魅力だ。

 

「『エシカル』という言葉を出すと、表面的な印象が先に来て『難しいね』『私はいいや』と離れてしまうことがまだあります。でも、何も知らなくても実際に手にとることで商品の良さを気に入って購入してくださる方も多いんです。

その人が何を求めているのか考えた上でお手伝いをして、お客さんが喜んでくれることが嬉しい。そんな関わりが結局好きなんだと思います。

ここが素敵なブランドと出会えるキッカケになってもらえたら嬉しいです」

店内でお話をしていると桜子さんが、お店をのぞくお散歩中の女性に気づきほほ笑む。

「こんにちは。いつもありがとうございます」。店舗をオープンしてから、ご近所の方の来店も多い。少しずつ確実に地域に根付いている。

 

『恩送り』−ペイフォワードという単語を調べると、そんな言葉がでてきた。

 

平日は仕事をしながら、帰宅後や週末にエシカルペイフォワードの活動をつづける桜子さん。出会って、繋いで、広めていく。人、地域、地球を思ってつくられたエシカル商品。その価値観を知っていた人から知らない人へ、ギフトを通じて広められると嬉しいと桜子さんは話します。

 

桜子さんに選んだのは赤い薔薇。

贈る花言葉は”愛情”です。

 

ここに行けば、優しさと出会える。

誰かを思う愛情が、手から手へ巡られていきますように。

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