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    多田 香澄、26歳。

 大学卒業後に写真館とこどもスタジオで経験を積んだのち、

今年の4月からフリーフォトグラファーとして活動をはじめた友人だ。

この日は、仕事終わりの彼女と渋谷で待ち合わせ。写真家ソール・ライター展を見に行った後、少しお酒を飲みながらいろんな話をした。

 

お互いに北海道を離れて9年目。

彼女は沖縄の大学を卒業後上京し就職、大学で出会った彼と結婚。

「北海道弁すごいっしょ。家でも普通に喋るから、彼もうつってるさー」

今でも北海道弁が標準。そんなありのままも、彼女の好きなところ。

彼女は札幌の高校を卒業後、沖縄へ。

国立、琉球大学に進学。

入学した観光学科の説明会で先輩と

沖縄の伝統芸能エイサーの話題で盛り上がり、

エイサー団体『琉球風車』へ入部。

同じく北海道から上京した私は、

桜美林大学にある琉球風車の東京支部

『桜風エイサー琉球風車』へ入部。

 

大学1年生、初めての夏の沖縄遠征で、かすみと出会った。

同じ北海道出身ということもあり意気投合は早かったけど、特に仲良くなったのはここ最近。

 

数年ぶりに再会した飲み会で、彼女と私は写真の話で盛り上がった。

大学卒業後、かすみは写真スタジオに新卒入社。

年の離れた弟がいる彼女は、昔から子どもが好きだったという。

写真館、こどもスタジオでも経験を重ね、その後は独立。

 

かすみも最初はカメラの使い方もわからない中で、毎日必死に仕事をしていたそう。

先輩に叱られたり、遅くまで勉強したり、

できないことへの怖さから写真を撮りたくないと思うときも。

 

それでもやっぱり子どもは好きだった。

 

「人見知りな子が懐いてくれて、お母さんが驚いてくれたりしてさ。

それはやっぱり嬉しいよね。

あと、撮影中は、子どもとの時間を一番楽しんでる自信がある」

 

現在は会議コーディネーターの仕事をしながら、写真撮影に飛び回っている。

撮影するのは主に子どもや家族写真。

今は先輩についてウエディング写真も撮れるように練習しているという。

「少しでも経験を積みたいから」と休みなく動き続ける彼女を、

私は純粋にすごいと思う。

Photo by Kasumi

 

結婚観についても、少し話した。

「結婚したからには、私がいてプラスになることはしたいと思っている。

料理とか、家事とか。彼の仕事はやっぱり応援したいからね」

彼女はすごくシンプルにそう話す。

自分の仕事を彼は応援してくれている、自分も彼の仕事を応援したい、と。

結婚生活も2年目。かすみもよく喋る子だけど、旦那様はもっと喋るのが好きな人だそう。結婚生活のことは、私はよくわからないけど、なんだか楽しそうだなーって思った。

 

「この間も友達と話してたんだけどさ、沖縄の大学を選んだのは本当に正解だった。

 

沖縄に行ってなかったら・・・沖縄に行くってあの時自分で決めたから、

旦那にも出会えたし、楓にもこうやって出会えたもんね」

 

同じ北海道で暮らしていたときには出会わずに、真逆の沖縄で出会ったりする。

ご縁って本当に不思議でおもしろい。

 

 

ひとしきり盛り上がった写真話。

かすみに、写真を撮ることって特別なことなのかな、と聞いてみた。

 

「家庭を持って、子どももいて、その中でのスタジオ撮影代の数万円って簡単に出せるものじゃないと思うんだよね。友達から、記念日の度に写真を撮りたくてもそこにお金はかけられないって話を聞いたりとかもしてさ。

子どもの今も、家族の今もその時だけだから、もっと気軽に写真が撮れるようになるといいなぁと思う」

Photo by Kasumi

 

大切な人との一生を誓う結婚式、子どもがお腹にいる時間、はじめての1歳の誕生日、元気に迎えることができた七五三、いつもの公園で遊ぶ何気ない日常、

今だけの、その瞬間を写真にとじこめること。

 

一枚の写真を見た瞬間に時間が戻り、記憶として空気や香りも蘇ってきたり。

思い出が自然と口から零れて、優しくなれたり、深呼吸ができたり。

そんな力が写真にはあると思う。

一枚を大切にする意味があると感じるから、私たちは写真を残すんだろうな。

 

彼女は出張カメラマンとして、家族が暮らす街へ自ら向かう。

彼女は現在千葉に住んでいるが、依頼があれば可能な範囲で撮影に向かう。

次月には関西での撮影も控えているという。

 

子どもや家族のリズムに寄り添って、日常を特別な一枚に残す仕事。

「もっとたくさんの人が気軽に、家族写真を残せるようにしたい」とかすみは話していた。

同じ年のかすみがカメラマンとして経験を積んでいく姿に刺激をうけて、

私は今年の4月からフォトスタジオで働き始めた。

26歳、未経験で写真業界。

正直遅いかな、と悩んだけれど、悩む間も惜しくなって飛び込んでみた。

 

転職に悩んだときも、仕事でつまずいたときも、香澄がいつも丁寧に相談にのってくれた。同じ年の仲間がいるって心強いなって、本当に思う。

 

仕事が辛くてへこんでいても、かすみと話した後は

「よし、私ももうちょっと頑張ってみよう」と背中を押されてる。

 

刺激しあって、ひとつひとつ乗り越えて、

気づいたら年を重ねて夢に近づいていけたらいいな。

かすみに選んだ花は、かすみ草。

 

そのままだけど、かすみと会う日にお花屋さんで偶然見つけて、これしかないって思った。

かすみ草の花言葉は“無垢の愛”と“無邪気”。

花言葉も、明るくて真っ直ぐなかすみにピッタリだと思う。

 

 

『家族写真を残す』という選択。

誰かに『今』を撮ってもらうことで、

当たり前だった日常の、特別なものに気づくかもしれない。

 

写真には、さりげないけれどそんな力があると私は信じている。

たくさんの家族の思い出を、優しい香澄の目でいっぱい残してほしい。

 

「いつか一緒に仕事できたらいいね」「北海道でも写真が撮れたらいいね。」

二人でいると、そんな夢ばっかりが膨らんで楽しくなっていく。

 

数年先はわからない。

そんなこれからを楽しみに、一緒に前に進んでいこうね。

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