春夏秋冬鮮やかな四季、日本食、

風情のある建物、漫画やアニメ…。

様々な魅力を求めて、

多くの外国人旅行者が訪れる国、日本。

 

「日本と世界が繋がる

ゲストハウスをつくりたい」

 

一人の男性のそんな想いから、

2017年5月東京・浅草橋に

新しいゲストハウスがオープンした。

 

名前は“Little Japan”。

一泊3500円から宿泊できる、

外国人旅行者向けの宿だ。

 

東京の都心にあり、観光名所も近い。

少し歩けば神田川、そんな立地に

この宿はある。

オーナーは、柚木理雄さん。

勤めていた農林水産省を辞め、ゲストハウス経営者としての人生をスタートさせた。

 

柚木さんは、どのようにしてゲストハウスをオープンするに至ったのか。

 

この日、オープンして間もない

Little Japanにお邪魔した。

 

 

初めて降りる浅草橋駅は、商店が軒を連ね、どこか懐かしい雰囲気が漂う町。

地図通りに、駅から7分ほど歩くと、

青いタイルで彩られた建物が見える。

一階にはまるで、かもめ食堂のような、

お洒落なガラス張りのカフェがある。

“Little Japan”と文字が見え、扉を開ける。

「おじゃまします」

 

入ってすぐはカフェスペース。

お洒落なキッチンからはちょうど、

カレーの良い匂いがする。

 

お昼ご飯を食べた後にも関わらず、

思わずお腹がなってしまいそうだ。

「ああ、こんにちは。

よく来てくださいました。

どうぞ入ってください」

 

ゆったりとした笑顔で

出迎えてくれた柚木さん。

ふわりと優しい雰囲気に、

ホッと緊張が解ける。

柚木さんと知りあったのは、

エシカルペイフォワードのオープン準備日。

​私は写真撮影でお手伝いをさせていただき、

彼は活動を統括する“芸術家の村”の代表。

緊張しながら挨拶をすると

「100夢、見てますよ。すごく素敵ですよね」

と笑いかけてくれた。

スマートで、物腰が柔らかい柚木さん。

「せっかくなので、中もご覧下さい」

 

柚木さん案内のもと、

宿泊スペースへ上がらせていただく。

 

白い壁、木のベッド。

爽やかでシンプルなインテリアが並ぶ。

どの階もまだ新しい木の香りに包まれている。

 

リトルジャパン、という名前から

日本的な造りやインテリアを想像していたが、決して和のイメージに寄せることはない。

「元々、あまりゴテゴテとした

装飾にはしたくなかったんです。

シンプルで、居心地の良い空間にしたくて」

 

途中、外国人旅行客が畳部屋でリラックスしている姿が見える。

 

挨拶した時の笑顔が羨ましいほどにゆったりとしていて、いい時間をすごしているんだろうなぁと素直に感じた。

リトルジャパンでは、空き家再生を通して

産業を生むことを一つの柱としている。

 

なぜ、空き家を使用するのか。

 

「必要とする人がいれば資産となるが、

必要とされなければ、負債となってしまう」と柚木さん。

 

柚木さんの実家は神戸。

お父様の実家は鉄工所を営んでいましたが、

お爺様が亡くなってからは、残った物たちを

「どう処理していくのか」といった問題に変わっていったそうです。

 

自身を通して目の当たりにした、

空き家問題。

住む人がいなくなれば、家が痛んでしまう。

年々増加している日本の空き家を、

まだ利用ができる間に必要な人へ届けることで循環できないか。

 

柚木さんはその方法として、宿泊施設として新たな役目を生むことで、

空き家の再生を目指しています。

 

今回の空き家の工事費は約4200万円。

改修工事費の一部は、想いに賛同する支援者から寄付金を募れるクラウドファンディングで募集。

 

100万円を目標に行ったプロジェクトは

120%で達成。

 

92人もの方からの支援と、目標金額を超えた120万7千円の寄付が集まりました。

 

起業前、農林水産省に勤めていた

柚木さんはこう話します。

「政府の成長戦略は何度も書き直され、

実行が難しい現実も見てきました。

それならば計画を“書く人”ではなくて、

“実行する人”が求められているのではないかと感じ、今に至ります」

また、小学校1年から3年生までは

ブラジルのビトリアで育ち、

元々海外旅行も好きだという柚木さん。

これまで一番印象に残った旅についても聞いてみました。

「そうですね。

社会人になってから行った、

インドネシア・バリ島での出会いですかね。

 

街にいた旅行会社の客引きの男の子と仲良くなって。

 

自分より若い子なんですけど、

一日中外で働いてました。

街頭に1日経っても

給料は5ドルと言っていました。

 

なんだか意気投合して、バリ島にいた一週間、彼の仕事の合間によく遊んだんです。

 

サーフィンをしたり、彼の会社の同僚の結婚式に参加したり(笑)

今もSNSで繋がっています。

おもしろい出会いでした」

 

ゲストハウスで働いていた経験もあり、旅先での出会いの楽しさを知っている柚木さんだからこその想いも。

 

「ゲストハウスの魅力は、

一人で来てもローカルの人と

特別な体験ができることだと思うんです。

 

有名な観光地に行ったよりも、そこにいた人と繋がることができる気がする。

 

英語に自信がない方はスタッフが繋げるので、ぜひ日本のお客様にもカフェやバーに

立ち寄っていただいて、気軽に交流を楽しんでもらえたらいいですね」

Little Japanオープンに向けては、

友人から沢山の寄付が集まった。

 

置かれている家具は種類も様々。

でも不思議と全部がうまく馴染んでいる。

「そうなんです。全てが混ざって、

いい雰囲気になりました」

いろんなところで使われていた家具が

一つの場所に集まって、空間を形作っているのは何だかおもしろい。

 

また、オープンして間もない頃から、

ご近所のお母さんが、差し入れを持って立ち寄ってくれているという。

 

「もうその方は、常連さんになってくれて。

家でおかずをいっぱい作って、お客さんやスタッフに食べさせてくれるんです。

 

昨日も来てくれたんですよ。

彼女の息子さんが僕と同じくらいみたいで、いつも気にかけてくれています。

 

彼女がバーに来てくれると場も明るくなるし、本当にありがたいです」

(Little Japan HPより)

 

—「日本と世界が繋がる

ゲストハウスをつくりたい」ー

そんな想いを掲げて

宿をオープンした柚木さん。

 

しかし、新しいものを生み出すことは、

簡単ではありませんでした。オープン準備は特に「大変だった」と語ります。

 

目に見えない理想を探り、形づくっていく地道な期間。「スタッフの子は特に、本当につらかったと思う」と柚木さん。

 

時間とともに外国人旅行者への認知が広がり、一部屋、また一部屋と予約が日々埋まっていくように。

同時に、カフェやバーに立ち寄ってくれる

日本人の常連さんも増えました。

 

外国から旅行してきた宿泊者と、

近所の常連さんが一緒になって

バーで過ごし笑う光景。

 

その時、光景を眺めていたスタッフが

「柚木さんが言っていたのは、

こういう事だったんですね」と

言ってくれたそうです。

「やりたかったことを感じてもらえて嬉しかったですね。

スタッフには本当に感謝しています」

包み込むような、穏やかな時間が流れる。

いろんな人の思いとともに

Little Japanは、一歩一歩

前にすすんでいる。

柚木さんに贈った花は、紫色のクレマチス。

 

花言葉は『旅人の喜び』。

 

旅をする喜び。旅人と出会う喜び。

「おかえり」や「ただいま」が行き交い、

繋がっていく。

そんな緩やかな居場所を、Little Japanという宿を通して柚木さんはつくっている。

私はそれを、とても素敵な仕事だと思った。

真っ青な空に、鮮やかなピンクの花が咲く。

初めて来た町の中で、

写真を撮りながら進む。

 

取材中の柚木さんのことばを思い出す。

「途中にブーゲンビリアが咲いていたでしょう。僕がブラジルに住んでた時に、よくみていた好きな花なんです」

ブラジルで走りまわる

子どもの彼を想像しながら、

太陽に向かってシャッターを押す。

 

町を歩いているとき、

誰かとの思い出がそこに重なると、

景色がグッと鮮やかになり泣きそうになる。

 

その町で出会った人のことばと景色が

繋がり、焼きついていく。

 

こうして一つの町が、

大切な場所になっていく。

 

町を彩る仕事。

 

柚木さんのゲストハウスに、

私も今度泊まってみよう。

浅草橋に暮らす人も、訪れる人も

Little Japanを通り抜ける人たちが

喜びに恵まれますように。

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