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「大学を卒業したら石垣島で働く」

横須賀で生まれ育った彼女はそう言って、縁もゆかりもない沖縄に飛び出し、4年半そこで生活した。久しぶりに再会すると、彼女の白かった肌はすっかり日に焼け、沖縄での生活を楽しんでいるようだった。

 

岩堀 悦子さん、えっちゃん。

 

英語と中国語が堪能な彼女は、観光業に従事した後に沖縄の船舶会社に就職した。石垣島へ来島する海外旅行客の通訳をしながら4年半。

 

沖縄での生活を終えた後は、4ヶ月間スイスとフランスへ。

2018年の9月からは新たな仕事の為、中国・上海へと飛び立った。

 

留まることなく誰もいない世界に一人で挑み続ける。

そんな彼女に、これまでの人生とこれからの夢を聞いてみました。

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えっちゃんは大学の同級生。

大学生の頃からよく、一人で海外旅行に行っていた。初めての旅行先はウズベキスタン。彼女に聞いた旅行話の中で私が一番好きなのは、モロッコで月の照らす砂漠をラクダに乗って歩いたエピソード。誰かに聞いた話ではない、えっちゃんにしか話せない生の体験談につい引きこまれてしまう。

 

 

えっちゃんが海外に強い興味を抱いたのは、中学生の頃。

キッカケは世界遺産の本との出会いだった。

 

「昔から、歴史や世界遺産を学ぶのが好きで。世界遺産の写真を眺めながら、いつか私もこの景色を見たいな〜と刺激を受けていたんだ」

 

「一番初めにそう思ったのは、万里の長城かな。写真を見て、こんなに長い道本当に歩ききれるのかな〜って思ってさ。中国に興味が湧いて歴史を学んでいるうちに、中国の人ともっと深い話ができるようになりたいと思って。それで中国語を勉強して、いつの間にか中国語が喋られるようになっていたよ」

 

 

その中国語が生きて、大人になった今では仕事に。

沖縄では観光を軸に様々な仕事をした。

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撮影:岩堀悦子

初めての土地での生活。知人はいなかったが、島の人に沖縄のことを教えてもらいながら生活をしていたそう。

 

「はじめは良かったんだけど、仕事が結構忙しくてさー。疲労とストレスで、だんだん心がささくれちゃってね。徐々に“楽しい”っていう感情が見つけられなくなっていったんだよね」

 

そんな時に救われたのは、1人の男性との出会いだった。

 

 

「パリで通訳士として働いていた60代の男性でね。仕事を引退してから、一年のうち半分はフランス、半分は沖縄で過ごしているような面白い人だった。

 

色々とトラブルが重なっていた時にその人に言われたのが、

 

『えっちゃんは優しい。けど、優しすぎるから冷静に考えなきゃダメだよ。

えっちゃんのスケールはこの国だけではわからない。

外国で挑戦するべきだ』って言ってくれてね。

 

いつかまた外国に行きたいと感じていたから、その言葉がすごく嬉しかった。

 

あぁ、自分の事を見てくれている人がいるんだって」

 

 

背中を押されたんですね。

 

「うん。その人と出会ってなかったら、自分でも自分のことわからなかったかも。自分を理解してくれる友人ができたことが嬉しかったなぁ」

 

先日、パリでその男性と再会したそうだ。

沖縄を離れてもなお、交友は続いている。

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えっちゃんの日課は日記をつけること。そしてそれをたまに読み返す。

 

「昔の日記を読むとおもしろいんだよ〜。

悩んでいたり、もがいている昔の自分の日記を読んでいると、あの時も頑張ったんだから、今も頑張ろうって思える。その時はどうにもできないと思っていたことも、ちゃんと自分で全部解決してきたんだから、本気を出せば何でもできるはず、って背中押されるんだ」

 

 

世界中、旅を続けるえっちゃん。

最近見た中で最も感動した景色は何か、聞いてみた。

「スイスで、アルプスの山を見られた時かな。モンブランが街から見えてね。

幼い頃よく日本で家族と山登りをしていたから、感動した。街中でアルプスの水が飲めてね…」

 

 

あの時あの場所に行ったから、出逢えた景色がある。

あの時自分が行き先を決めたから、出会えた人がいる。

 

彼女の話を聞いていると、方向性は自分で決めているにしろ、出会いって面白いなぁと感じる。

 

でも、新しい世界に挑戦することはきっと楽しいことばかりではないはずだ。慣れないことはしんどいし、壁に当たることもあると思う。

 

なぜ彼女は、臆せず新たな世界に飛び込み続けることができるんだろう?

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「だって、時間はいくらでもあるわけじゃないからね」

 

「時間はいくらでもあるわけじゃないから、本当に大切なものに時間を使いたいと思っている。くだらないことに付き合っているヒマはないし、時間は自分の為に使うべき。

 

自分に取って本当に大切なものって何かとか、限られた時間を誰と共有したいかを考えていると、今はいらない情報に左右されなくなったよ。

 

物や情報に執着しない。いらないものを捨てると楽になれるよ」

 

 

そうハッキリと言い切る彼女の顔は、清々しかった。

 

えっちゃんに贈った花は、バーゼリア。

花言葉は”小さな勇気”。

 

断ち切る勇気、進む勇気、諦める勇気。

新しいチャレンジをする度に、いくつも勇気が必要な場面に遭遇する。

 

「大丈夫。生きていれば何とかなるよ」

どんな失敗をしても、命があれば前に進むことができる。

小さな勇気の積み重ねが、いつか大きな勇気になっていくのだろうか。

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「港にくるとさー、やっぱりテンション上がるよね」

 

大桟橋に近づき船が見えはじめると、えっちゃんは明らかに嬉しそうで、楽しそう。9月なのに、今日は春みたいに暖かくて、心地いい風が吹いている。

 

「象の背中」と呼ばれる大桟橋の上を目指し、緩やかな坂をゆっくり登る。

 

頂上に上がると、そこではいろんな言語が飛び交っていた。

中国、インド、アメリカ、日本…いろんな国の人たちが同じ方向に座っている。

海に沈んでいく夕陽を、みんなが優しい目で見つめている。

ある人は写真を撮り、ある人は子どもと遊びながら、ある人は恋人と一緒に、穏やかに時間を過ごしているようにみえた。

 

えっちゃんがおもしろいポーズで写真に写ろうと試行錯誤していると、インド人の女の子が遊びに来た。

 

えっちゃんを撮ろうとしたら「虹!!」

雨も降っていないのに、街並みを包むようなまぁるい虹が見えた。

えっちゃんといると、不思議なことが起こるようだ。何だかすごく、平和な時間だった。

 

 

 

ひとしきり撮影を楽しんだ後は夜ご飯も一緒に食べた。

えっちゃんに、これからどうするのかを尋ねるとこんな答えが返って来た。

 

「行きたいところがありすぎるから、5年間は上海で働いて資金を貯める。

その先どうしているかは、わからない」

 

 

今こうしている間にも、どこかで彼女は新しい道を歩いている。

自分の力で生きているえっちゃんが、私にはすごく格好よく思えた。

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私は今28歳。

生きているうちに、何をしたい?

どこに行って、どんな景色を見ていきたい?

 

えっちゃんの話を思い返しながら、未来に想いを馳せてみる。

生きているうちに、私も色んな景色を目に焼きつけたい。

次に会った時は、どんな話ができるかな。

撮影:岩堀悦子

No.58 岩堀 悦子

−世界を自分の目で見る

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