「楓に紹介したい人がいる」

そうメッセージをくれたのは、以前沖縄で撮影をしたとーもーさん

 

彼女が沖縄で仲良くなった素敵なご家族がいて、ちょうどお嬢さんが関東にいるので100夢でどうかと繋いでくれた。

 

とーもーさんが素敵だと思う人…ぜひ会ってみたい!そう伝えるとトントン拍子で話が進み、ありがたいことにご家族の中から三姉妹の次女・当時18歳の「レイちゃん」が協力してくれることになった。

 

 

撮影の当日、とーもーさんとお母さんとレイちゃんと私、4人でやりとりをしたメッセンジャーを眺めながら、ちょっと緊張しながら待ち合わせ場所へと向かった。

「はじめまして、レイラニです」

 

スラッと背の高い女性と目が合い、声をかけると彼女がレイちゃんだった。

 

「レイラニはハワイの言葉で『天からの贈り物』っていう意味があるそうです。日本名は櫻(さくら)って言います。名前はどっちでもいいですよ、使いやすい方で!」

 

初めて会ったと思わせないほど、気さくに色んな話をしてくれるレイちゃん。明るくて可愛い女の子だ。路地裏のカフェでご飯を一緒に食べながら、レイちゃんのことを教えてもらった。

 

 

彼女の出身は東京。

母親は日本人、父親はアメリカと日本のハーフで2つの国の血を引いている。米軍に所属する父親の転勤で11年間を沖縄で暮らし、その後はアメリカと韓国で生活をしていたそう。

「沖縄はすごく好きな場所。沖縄の人って優しいんですよ。なんくるないさぁーって人ばっかりで。子どもが大きな声で泣いていても『あらー、どうしたの?』『かわいいねえ』って笑っているの。アメリカ人と日本人とのハーフの子もいっぱいいたし、沖縄にいたときはみんなと仲が良かったですね」

 

とーもーさんと初めて会った日のことや、沖縄での思い出話を楽しそうに教えてくれた。沖縄が好きなことが表情からも充分にわかり、聞いている私も楽しくなってくる。

 

一方、次の引っ越し先であるアメリカでの話は少し表情が変わってくる。

 

「その頃はまだ、英語をみんなみたいに上手く喋れなくて」

言語のベースが英語に変わり、学校では言語の違いによる壁に当たった。彼女がいた頃、その地域では肌の色による差別もあったという。

 

なかなかクラスに馴染めず戸惑っている彼女を気にかけて、先生が『隣のクラスまでのお使い』を頼んでくれたこともあった。

「『英語ではこう言ったらいいよ』って、あらかじめ先生が教えてくれるんだけど、クラスに着いたら全部忘れちゃうの。『なんで何もしゃべらないの?』って、見ている子たちにはクスクス笑われて。もう、キーッ!ってなっちゃって(笑)悔しくて。恥ずかしい思い、いっぱいしましたよ。悔しい思いもいっぱいした」

 

しかし、その悔しさが彼女にはバネになった。

「言葉が伝わらないときは絵を描いて友達を遊びに誘いました。別に絵が得意な訳じゃないですよ。丸かいてちょんって感じ!でも、そういうことを続けていたらだんだん友達も増えてきて。自分自身も強くなっていきました」

 

その後も、レイちゃんは色んなことを教えてくれた。

フロリダではとうもろこし畑を迷路にして遊んだこと、高校生から始めたマーチングバンドではドラムラインを担当して、ディズニーランドでパレードをしたこと。

 

何でも中途半端にしないのは、レイちゃんの性格なのだろう。

 

「昔から、悔しさから伸びることが多いかも」

 

そう話す彼女のもう1つのベースを作ってきたのは7歳から始めたタヒチアンダンスだ。なんと、ラスベガスで行われた世界大会での優勝経験も持っている。

写真:本人提供

 

「初めて大会に出たのは、習ってすぐの年。大会は3回戦のトーナメント制だったんですけど、1回戦で負けちゃったんですよ。今思えば、習い始めたばかりなので当たり前じゃないですか。でも、すごく悔しくて」

 

「次こそは!って思って練習していたら、トランポリンで遊んでいる時に骨折しちゃって(笑)。それでまた次こそ!って思いながら練習して、優勝できましたね」

 

色んなことを乗り越えてきた彼女だが、自分自身のアイデンティティについて悩んでいた時期が過去にあったそう。「『何でウィーバーなのに日本人の顔なの?』って言われることがあって。日本人でもアメリカ人でもない、じゃぁ自分はいったい何なんだろう?って…」

そんな彼女を変えてくれたのが、タヒチアンダンスだった。

「大会で審査員にジャッジしてもらうためには、1番良い自分を見せなくてはいけないです。だからまずは、自分が自分のことをしっかりと知らないといけない。そういうことを続けている間に、ああ別に他の人にならなくていいや、ってだんだん思えていって」

 

「踊っている時は、楽しい!イェイ!みたいな感じだったんですけど(笑)、離れてみると、ダンスって色んなこと教えてくれたんだなあって。自分にとっては人生の中心です」

 

 

レイちゃんの夢は今、いくつかあるみたいだ。

 

ソーシャルワーカーとして弱い立場にある子どもや女性の支援をすることや、自分と同じようにアイデンティティに悩む人のサポートをすること。海外で働くことを視野に、まずは大学で勉強してその先を見つけていきたいと素直に教えてくれた。

 

夢の軸はどれも彼女の実体験から。

女性の支援は、父親が単身赴任中に三姉妹と母親の女性だけで暮らしていた時期のことや、タヒチアンダンスを通した経験が元になっているそう。

 

「周りが女の人ばかりだったから、女性が体験してきた苦労とかを小さい頃から聞いてきて。私もダンスのショーをしていて、酔っ払ったおじさんにからかわれることもあった。この国でもまだ女性への差別があるっていうことは、他ではもっと強い差別を受けている人がいるんじゃないかなって」

「一緒に同じ神様を祈っているのに、男と女、違う性別に生まれただけでそんなに違うの?って思っちゃう」

レイちゃんは、疑問に思っていることをまっすぐに話してくれた。

確かにそうだよね、うーん何でだろう、と私も話を聞きながら考えたり、あれ?私も決めつけた見方をしていないかな?と、ハッとした。

ハーフやクォーターの見方についてのレイちゃん節も、私にとってはなるほどなあ、だった。「『あの子ハーフだ、可愛い〜』って言う人がいるけど、それって『あの子可愛い!』だけじゃダメなの?って思うんです。その人本人じゃなくて”ハーフ”の部分だけを見られているみたいで、なんか嫌だなって思います。なんか、マルチーズとかプードルと同じような並びで、ハーフって言われている感じで…」

 

きっと、どんなことも本人にしか分からないことはいっぱいあって、レイちゃんと話したこの日は、私がそれまで考えたことがなかったことを考える時間になった。だから、レイちゃんと話せて純粋にすごく嬉しかった。​

彼女に贈った花はビバーナム・ティヌス。

花言葉は「私を見て」。

 

レイちゃんは、その人を取り巻く“何か”じゃなくて、その人自身を見ることの大切さを教えてくれた。将来の夢について話す中でも「(悩んでいる人がいたら)もっと自分を大切にしていいんだよ、自分の意見を言って良いんだよって伝えたい」と口にしていた。彼女にとって、これからもその軸は変わらないんだと思う。

 

ちなみに、そんなレイちゃんが尊敬している人は「お母さん」。

 

タヒチアンダンスを習っているとき、いつも完璧な衣装を作ってくれたこと。一緒に遠征をして支えてくれたこと。「彼女は本当にすごいです」と、尊敬する理由をいくつも教えてくれた。お母さんをよく見ているからなのか、なんだかレイちゃんの性格も似てきたそう。「お父さんからは『マミーは2人もいらないよ』と言われています(笑)」と笑っていた。

このとき彼女は、大学進学を目指す受験生。

「話すのはまだ良いんだけど、漢字が苦手で…」と、小論文の話や入学のハードルについての話なども少しした。最後には「いつも悔しいときに強くなったから、大学もこんな調子で合格できたらいいな」と笑っていたレイちゃん。

 

その後、彼女は大学に合格。

この春からは大学生になるそうだ。

 

合格、おめでとう。

これからもレイちゃんの人生に、素敵な出会いが沢山ありますように。

No.62 レイラニ櫻・ウィーバー​

−「自分を大切にしていいんだよ」って伝えること

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